コラム

「参加できない」をなくす施策設計 ― デジタルデバイドとその対策

公開日 2026.02.20 更新日 2026.02.19  作成者 A.N 


デジタル施策を導入しても、「参加率が伸びない」「途中離脱が多い」といった課題に直面するケースは少なくありません。
こうした問題は、ツールや施策内容の良し悪し以前に、利用者が途中でつまずいてしまう構造に起因していることが多く見られます。


デジタル施策が広がる一方で、「参加できない人」が静かに離脱している現実があります。


この“つまずき”の背景にあるのが、「デジタルデバイド」という考え方です。
一般にデジタルデバイドは、年齢やITリテラシーの差として語られがちですが、デジタル施策の現場では、設計上の前提条件や導線の複雑さが、利用者との間に見えない壁をつくっているケースも少なくありません。
本記事では、デジタル施策で人が離脱してしまう理由を「デジタルデバイド」という視点から整理し、デジタル施策においてどのような対策が有効なのかを、具体例を交えて解説します。



デジタルデバイドとは?

「参加できない」をなくす施策設計 ― デジタルデバイドとその対策


デジタルデバイドとは、インターネットやスマートフォンなどのデジタル技術を「利用できる人」と「十分に利用できない人」との間に生じる情報・活用の格差(情報格差)を指します。
ITリテラシーの違いや利用環境の差によって、同じ情報やサービスであっても、体験のしやすさに大きな差が生まれてしまう状態です。


デジタルデバイドは1990年代後半から指摘され、現代の社会的な分断や経済・教育格差を広げる大きな課題とされています。





◎ よくあるデジタルデバイドの誤解

「デジタルデバイド」という言葉は、高齢者と若年層の利用格差や、都市部と地方の環境差といった文脈で語られることが多く、デジタル施策においても「利用者側の問題」として捉えられがちです。


しかし、自治体施策や観光施策、イベント施策など、幅広い層を対象とするデジタル施策の現場では、施策設計そのものがデジタルデバイドを生み出しているケースも少なくありません。


・スマートフォン非所持者を想定していない

・利用者のスマートフォンが非対応機種である

・登録や操作の前提条件が多すぎる

・説明を読まなければ進めない

・失敗すると戻れない


こうした設計が、意図せず参加のハードルを高めてしまうことがあります。
デジタルデバイドは、単なるITリテラシーの問題ではなく、「誰を前提に設計しているか」という施策側の視点によって生じる課題でもあります。


スマートフォンを持たない、または非対応機種であることを想定していない設計

デジタルクーポンを主としたデジタル施策では、「スマートフォンを持っていること」が当然の前提として設計されているケースが少なくありません。
しかし実際の利用者の中には、スマートフォンを所有していない、あるいは持っていてもシステムに対応していないケースが一定数存在します。


こうした利用者にとっては、操作以前に参加の入口が存在せず、施策の内容に関係なく最初から除外されてしまいます。


特に自治体施策ではユーザーの年齢層の幅が広く、この前提のズレが施策の公平性や納得感に影響を及ぼす要因となります。




◎ スマートフォン不所持・非対応機種ユーザーへの対応の例(参加手段の確保)


★代替媒体を用意する(紙・カード)

スマートフォンを持たない人に向けて、紙クーポンやカードなどの代替媒体を用意する方法です。
窓口配布や郵送による紙クーポンは導入しやすく、高齢者にも理解されやすい一方、印刷・配送コストや不正利用への配慮が必要になります。


また、QRコードを印字したカードやICカードなど、「スマートフォンの代わりに持ち歩ける媒体」を配布する方式も有効です。
レジでの読み取りによって利用履歴をデータ化できるため、紙クーポンに比べて運用管理しやすいという特徴があります。


いずれの場合も、デジタルと同条件・同価値で利用できることを前提に設計することで、参加者間の不公平感を抑えることが重要です。



★家族による代理利用

世帯単位でスマートフォンを活用する「世帯代表スマホ方式」も、現実的な選択肢のひとつです。
子育て支援や生活支援給付など、世帯を単位とした施策では特に相性が良く、利用者側の負担を抑えやすい方法と言えます。
ただし、不正防止や利用人数の管理、本人確認方法については、事前にルールを明確にしておく必要があります。



★店頭オペレーションでの救済

スマートフォンを持たない人でも利用できるよう、店舗側で代理処理を行う設計も有効です。
本人確認書類の提示や台帳管理によって利用を可能にすることで、高齢者比率の高い地域や商店街施策などでは、参加率の向上が期待できます。



その他、デジタル施策の現場で起きているデジタルデバイド

① 前提条件が多すぎる設計

デジタル施策では、登録・ログイン・メール認証・個人情報入力など、参加前に複数の手順を求めてしまうケースが少なくありません。


施策側としては「正しく運用するため」「データを取得するため」の合理的な判断でも、利用者にとっては始める前に越えるべきハードルが多すぎる状態になります。

「参加できない」をなくす施策設計 ― デジタルデバイドとその対策



② 説明を読むことが前提になっている

操作方法や注意事項を丁寧に説明しているつもりでも、その内容が「読まなければ理解できない」設計になっている場合、多くの利用者はそこでつまずきます。


実際の利用シーンでは、すべての説明文を読む人ばかりではありません。流し見、読み飛ばし、直感的な操作を前提に行動する人も多く存在します。「説明を読めば分かる」という設計は、読まない人を想定していない設計でもあり、結果としてデジタルデバイドを生みやすくなります。

「参加できない」をなくす施策設計 ― デジタルデバイドとその対策


③ 失敗したときに戻れない設計

エラーが発生した際に、「何が原因なのか」「どうすれば再開できるのか」が分からない設計も、離脱を招く大きな要因です。


一度操作に失敗すると、戻る導線が見つからない、再挑戦の方法が分からない、そのまま画面を閉じてしまう――こうした行動は決して珍しいものではありません。
特に、周囲にスタッフがいない状況では、一度の失敗が参加断念につながるケースも多く見られます。

「参加できない」をなくす施策設計 ― デジタルデバイドとその対策

デジタルデバイドを解消するためには

デジタルデバイド対策とは、年齢・障害・経済的理由などでネットや端末が使えない人が取り残されないよう、誰もがデジタル恩恵を受けられる環境を作る活動です。




◎ 利用者に向けたデジタルデバイド対策

下記は行政・企業・地域コミュニティが連携して実施している施策で、住民の孤立防止や社会包摂を目的としています。
これらの取り組みを通じて、デジタル技術に不慣れな人でも安心して利用できる環境が整えられています。


■主な対策例

  • ・デジタル活用支援(スマホ教室)
     高齢者や不慣れな人にスマホ操作、オンライン申請、マイナンバーカードの利用方法を教える講座。

  • ・通信インフラの整備
     地方・過疎地での高速インターネット回線(ブロードバンド)の導入。

  • ・相談窓口の設置
     市役所や施設でスマホ相談所を設置し、オンライン手続きをサポート。

  • ・使いやすい端末・サービスの提供
     高齢者や障害者でも扱いやすいアクセシビリティに配慮したデジタルサービス。

  • ・GIGAスクール構想
     1人1台端末の整備とICT教育の推進。



◎ 誰でも使いやすい設計(ユニバーサルデザイン)

本質的なデジタルデバイド対策は、誰でも安心して利用できる設計、すなわちユニバーサルデザインの推進に集約されます。


具体的には、登録や入力を最小限にする、直感的に操作できる導線を作る、失敗しても再開できる仕組みを用意する、段階的に情報を提示するなどの工夫があります。


さらに、イラストや音声で操作を補助することも有効です。
こうした設計の工夫により、誰もが迷わず安心して操作できる環境が整います。




◎ 体験設計(UX)のポイント

ユニバーサルデザインで操作のしやすさを確保した上で、体験設計の工夫を取り入れることで、参加の継続や満足度も高められます。


■設計のポイント

  •  ★進捗の可視化:どこまで進んだかを示す表示で達成感を演出

  •  ★楽しさや継続意欲の演出:ゲーム化やバッジ、ポイント、チャレンジ要素で参加意欲促進


また、実際の利用者によるテストでつまずきやすい箇所を把握し改善することで、よりスムーズな体験が実現します。



デジタル施策におけるデジタルデバイド対策の実例

デジタル施策では、ユニバーサルデザインや体験設計を取り入れるだけでなく、実際の運用や技術の工夫によって参加しやすさを高めることも重要です。




「参加できない」をなくす施策設計 ― デジタルデバイドとその対策

◎ QRコードやNFCなどのデジタル連携

スタンプラリーやキャンペーンでは、スマホをかざすだけで参加できるNFCや、カメラで読み取るQRコードを活用した仕組みが導入できます。
これにより事前の複雑な登録や操作が不要になり、ITに不慣れな人でも直感的に参加できます。




「参加できない」をなくす施策設計 ― デジタルデバイドとその対策

◎ 進捗や成果の可視化

参加者の進捗や成果を可視化することも重要です。
ポイントやバッジ、進捗バーなどで達成状況を示すことで、段階的な達成感が生まれ、参加の継続意欲を高めます。こうした仕組みにより、施策を楽しみながら最後まで体験してもらうことができます。




「参加できない」をなくす施策設計 ― デジタルデバイドとその対策

◎ サポート体制の整備

参加者が困ったときにすぐに解決できるサポート体制も不可欠です。
メールや電話、窓口での対応や、運営側がワンストップでサポートできる体制を整えることで、途中でつまずくことなく安心して施策に参加できます。事前にFAQや操作ガイドを用意しておくことも、自己解決を支援する上で有効です。




「参加できない」をなくす施策設計 ― デジタルデバイドとその対策

◎ 多デバイス・アクセシビリティ対応

施策はスマホ、タブレットなどさまざまな端末で利用できるよう設計され、文字サイズ調整や色覚配慮、多言語対応なども取り入れることで、幅広い層が安心して参加できる環境が整えられています。


まとめ:これからのデジタル施策に求められる視点

いかがだったでしょうか?


デジタルデバイドは、単に「ITに不慣れな人の問題」ではありません。
施策を設計する側が、誰を前提に設計しているのかによって生まれる“構造的な壁”でもあります。


「参加できない」という状態は、利用者の努力不足ではなく、設計上の前提のズレから生じているケースも少なくありません。


これからのデジタル施策に求められるのは、
“使える人を増やす”ことではなく、“参加できないを生まない設計”を行うことです。


ユニバーサルデザインや体験設計の工夫、そしてスマートフォン非所持者への代替手段の確保。
こうした視点を持つことで、デジタル施策はより多くの人にとって公平で、納得感のあるものになります。


「参加できない」をなくすこと。それこそが、これからのデジタル施策における重要な視点なのです。


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