
近年、重点支援地方交付金を活用し、デジタルクーポン・電子商品券事業を導入する自治体が増えています。
物価高騰への対応や住民生活の支援、地元商店の活性化など、複数の政策目的を同時に実現できる点が大きな特長です。
一方で、初めて取り組む自治体では、
「何から着手すべきか分からない」「年度内に開始できるのか不安」「仕様書の内容判断が難しい」
といった課題の声も少なくありません。
本記事では、デジタルクーポン事業を検討する際の基本的な考え方や進め方、押さえておくべきポイントを分かりやすく整理して解説します。
これから検討を始める自治体職員の方が、全体像を把握するための参考になれば幸いです。

何から始めたらよいか?まず決めるべきポイント
デジタルクーポン事業は、初期段階での整理が非常に重要です。
特に「目的」「対象」「配布方法」「運用体制」を早めに固めておくことで、その後の仕様書作成や事業者選定が格段にスムーズになります。
① 事業目的の整理
最初に行うべきは、この事業で何を実現したいのかを明確にすることです。
目的によって、対象者やクーポンの設計は大きく変わります。
例えば、
- ・生活困窮者支援の場合は、所得制限を設けるケースが多くなります
- ・物価高騰対策では、全住民を対象とする自治体が多い傾向です
- ・地域経済の活性化を重視する場合は、中小事業者限定で利用できる設計が効果的です
この段階を曖昧にしたまま進めると、後から制度設計を見直す必要が生じやすくなります。
② 対象店舗の範囲をどうするか
次に検討するのが、どの店舗で利用できるかです。
これは住民の利便性と、地元経済への波及効果のバランスを考える必要があります。
- ・全店舗対象にすると利便性は高い一方、大手チェーンに利用が集中する可能性があります
- ・中小事業者のみに限定すると地域経済への効果は高まりますが、利用できる店舗が少なくなり、結果として利用率が伸びず予算が余るケースもあります
- ・食料品や日用品など業種を限定する方法も、政策目的を分かりやすく示す手法の一つです
③ 配布方式の検討
配布方式は、住民のITリテラシーや自治体の運用体制を踏まえて決めます。
- ・デジタルのみの場合、コストを抑えられ、不正利用対策もしやすい
- ・紙+デジタル併用の場合、スマートフォン操作が苦手な方への配慮が可能です。
- ・併用式にする場合は、紙とデジタルで重複利用ができない制御を入れる必要があります。
どちらが正解というわけではなく、地域特性に合った方式を選ぶことが重要です。
中小企業応援がメインであればデジタルのみ方式を選択。物価高騰による住民支援がメインであれば紙とデジタルの併用がお勧めです。
④ 配布金額と全体予算の考え方
1人あたりの配布金額は、3,000円・5,000円・1万円など、予算規模に応じて設定します。
あわせて、事業全体の予算として以下の費用も考慮する必要があります。
- ・広報、告知費
- ・配布作業にかかる費用
- ・デジタルクーポンシステム費用
- ・コールセンター運営費
- ・店舗募集、説明対応
- ・割引額の精算や振込手数料
通知方法については、メールはコストが安い一方で届かないケースも増えています。
そのため、LINEを使った通知を採用する自治体も増えています。
なお、LINE通知は通常費用がかかりますが、自治体公式アカウントについては1アカウント分が無料となる制度もあります。
⑤ 導入スケジュールの作成
スケジュールはスタートしたい日からの逆算となります。
通常仕様内容がほぼ決まっているSaas型やクーポンパッケージ版を利用する場合は、システム構築は最短で1か月~1か月半となります。
カスタマイズを行う場合は仕様調整に1か月、制作と動作テストに2カ月、検品動作テスト・開始準備に0.5カ月といった形になります。完全にオリジナルで構築する場合はシステム構築・動作テストで3カ月程度はかかることが多いです。
その他、店舗向けの参加募集期間、市民向けの周知期間、店舗への説明会実施などを並行して進める必要があります。
⑥ 告知方法の検討
告知方法としては、
- ・市の広報誌、ホームページ
- ・回覧板、町内掲示板
- ・フリーペーパー
- ・SNS
- ・駅構内広告
- ・プレスリリース(記者クラブ)
などが考えられます。
あらかじめ複数の手段を想定し、概算予算を見積もっておくことが重要です。
なお、対象者に認証コードを郵送する方式の場合、スタート時に大規模な告知を行わず、利用状況を見ながら段階的に周知を追加することで、広告費を抑えることも可能です。
デジタルクーポンの主な実施モデル
自治体では目的や地域特性に応じて、さまざまな方式が採用されています。
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Aタイプ:アプリ不要のWEBクーポン+QR消込型スマートフォンに表示されたクーポンを、店舗がQRコードで読み取る方式です。
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Bタイプ:紙+デジタルのハイブリッド型全世帯に認証コードを配布し、希望者は紙に切り替えられる方式です。
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Cタイプ:用途限定型クーポン食料品や子育て用品など、使える用途を限定することで政策目的を明確にできます。
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デジタルクーポン事業の注意点
①問い合わせ対応
事業開始1か月前程度からコールセンターを設置し、参加店舗等の問合せ対応を行います。
事業開始直後は問い合わせが集中するためコールセンターの人員を一時的に増員しておきます。
コールセンター体制やFAQ、操作マニュアルの整備が重要です。必要に応じて操作方法の動画の作成及び提供を行います。
外国人住民が多い地域では、多言語対応も検討が必要です。
②加盟店の操作負担
店舗操作はできるだけ簡単にすることが重要です。
「金額確認→利用済ボタンを押す」など、直感的な操作が望まれます。
デジタルクーポン分については利用集計をせずとも利用実績データに基づきキャッシュバックが行われます。
紙と併用する場合は、紙の利用分のみ事務局へ枚数報告及び利用済商品券の郵送等が必要です。
③不正利用対策
LINE認証やSMS認証による1電話番号につき1ログイン制限、シリアルコードへの攻撃対策は必須です。
④個人情報の取り扱い
必要以上の個人情報を取得しない設計が推奨されます。
性別・年代・郵便番号程度に留める自治体が多くなっています。
納品期間の目安
下記は1月に事業者が決定した場合のスケジュール例です。
1月中旬~下旬:事業者決定
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2月上旬~中旬:仕様調整及び決定
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2月中旬~末:キャンペーン告知サイト作成・参加店舗募集開始
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3月上旬~中旬:クーポンシステム構築・動作テスト
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3月中旬から下旬:検品動作テスト
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3月下旬~3月末:事業スタート
既存のクーポン基盤を持つ事業者を選ぶことで、構築期間を短縮できます。デジタル実施でのコールセンターやキャッシュバック(換金)対応を経験済の事業者に依頼するとトラブルが少なく、また対応も慣れていることから運用中もスムーズです。
店舗募集については商工会と連携する自治体も多く、段階的に参加店舗を増やす方法も有効です。
重点支援地方交付金を活用したデジタルクーポンの企画例
企画例① 『全市民配布型デジタル商品券』

物価高騰支援として対象者全員に配布されるデジタルクーポンです。
店舗の規模別にクーポンが区分されており、特定の店舗に偏らず利用していただけます。スマートフォンをお持ちでない方向けに「デジタル・紙併用タイプ」も用意されています。
\企画書の詳細・ご請求はこちら!/
→全市民配布型デジタル商品券(外部リンク)
企画例② 『限定対象者店舗規模別デジタル商品券』

配布された可変QRコードまたはシリアルコードを読み取ることにより、お買い物券として、利用ができるクーポンです。店舗の規模に応じて利用できるクーポンが区別されます。店舗別QRコードで利用店舗を識別し、対象店舗が多い場合でも管理・運用が容易です。
\企画書の詳細・ご請求はこちら!/
→限定対象者店舗規模別デジタル商品券(外部リンク)
企画例③ 『物価高騰対策!1円単位で利用できるお米券デジタルクーポン』

物価高騰対策としてお米・生活用品などと交換できるデジタルクーポンです。
栄養の基本であるお米に確保できるため、子どもの健やかな成長を手助けし、子育て支援にもつながります。
\企画書の詳細・ご請求はこちら!/
→物価高騰対策!1円単位で利用できるお米券デジタルクーポン(外部リンク)
まとめ
いかがだったでしょうか。
デジタルクーポン事業は、システム選定よりも先に「目的・対象・配布方法・運用体制」を整理することが成功のポイントです。
初期設計を曖昧にすると、後から制度や仕様の見直しが発生しやすくなります。
地域特性や住民層に合った実施モデルを選び、実績のある事業者と進めることで、短期間でも安定した運用が可能になります。
まずは無理のない形で全体像を固めることが、スムーズな事業実施につながります。
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